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【敷金返還】判例でわかる!原状回復の内容と項目ごとの事例

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判例

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目次
1.原状回復に関する事例
1-1.特約に「現状に回復する」と記載がある場合
1-2.退去後に覚書を署名した場合
1-3.通常損耗を賃借人負担と認めた特約
1-4.消費者契約法第10条に照らし特約が無効になった事例

2.クロス張替の事例
2-1.クロスの経年変化と自然損耗
2-2.部屋全体のクロス張替えを賃借人負担と認めた事例

3.経年劣化(変化)を考慮した事例
3-1.クロス・設備の残存価値が示された事例
3-2.経年劣化は賃貸人負担とした事例

4.ハウスクリーニング特約の事例
4-1.ハウスクリーニング特約が有効とされた事例
4-2.特約に記載のないクリーニング費用は賃貸人負担とした事例

1.原状回復に関する事例

 
原状回復という言葉を聞くと、修繕にかかった費用はすべて賃借人負担というのをイメージしてしまいますが、実際の裁判では原状回復について賃借人の負担部分を明確にしております。

原状回復の意味

ガイドラインの原状回復定義

原状回復に関する訴訟の多くは賃貸人が負担すべき修繕箇所を「契約書や特約」にて賃借人に負担させる内容を記載し請求した事例が多くあり、裁判所では「原状回復の意味」を明確にしており、ガイドラインでも判例に基づき原状回復の定義しております。

ガイドラインに記載している原状回復の定義はこうあります。

原状回復とは、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗等

特約の要件

また賃貸借契約書の特約の部分にて争点となることも多く、多くの判例よりどのような特約が有効なのかが分かってきた。

ガイドラインも判例より特約の要件を定義しており、このように記載があります。

①特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなど客観的な合理的理由が存在すること

②賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕などの義務を負う事について納得していること

③賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

今回、敷金返還訴訟などで争点となる事が多い項目や現在のガイドラインの基礎となる判例などをまとめております。

「特約記載・契約書記載」の項目では、賃貸人がどのような「特約・契約書」の記載で賃借人に請求しているのかをまとめており、「裁判所」の項目では裁判所の判決を記載しております。

1-1.特約に「現状に回復する」と記載がある場合

東京地裁  平成6年7月1日

特約記載

「賃借人は賃貸人に対し、契約終了と同時に本物件を現(原)状に回復して(但し賃貸人の計算に基づく賠償金をもって回復に替えることができる)、明け渡さなければならない」という記載。

裁判所

本件特約における「原状回復」という文言は、賃借人の故意、過失による建物の毀損や通常でない使用方法による劣化等についてのみの回復を義務付けたとするのが相当である。

賃借人は通常の使い方によって使用するとともに、善良な管理者の注意義務をもって物件を管理し、明け渡した場合は使用に必然的に伴う汚損、損耗は本件特約にいう原状回復の対象にはならないとする。

1-2.退去後に覚書を署名した場合

大阪高判 平成12年8月22日

契約書記載

「借主は、本契約が終了したときは、借主の費用をもって本物件を当初契約時の現状に復旧させ、貸主に明け渡さなければならない」と記載

明け渡し時に覚書

「借主は契約書条項により、本物件を当初契約時の状態に復旧させるため、クロス、建具、畳、フロア等の張替費用及び設備器具の修理代金を実費にて清算されることになります。」と記載の覚書を物件明け渡し時に署名押印。

裁判所

通常損耗も賃借人負担とするときには、契約書条項に明確に定めて、賃借人の承諾を得て契約すべきである。

契約書条項の「契約時の原状に復旧させ」との文言は、契約終了時の賃借人の一般的な原状回復義務を規定したものとしか読むことができなく、本件覚書は契約書条項を引用しているから、これを超える定めをしたとは言えない。

1-3.通常損耗を賃借人負担と認めた特約

東京地裁 平成12年12月18日

特約記載

「賃借人は、本物件を明け渡すときは、畳表替え、襖の張替、クロスの張替え、クリーニング費用を負担する。」

裁判所

消費者保護の観点も重要であるが、私法上、私的自治の原則が重要な私法原理であって自己の意思に基づいて契約を締結した以上は、その責任において、契約上の法律関係に拘束されるのが大前提である。

本件特約が公序良俗に反するとは認めがたく、特約事項が自然損耗分を含まないと解釈するのは困難であり、本件特約条項は拘束力を持つといわざるを得ないとし、賃借人負担とする。

1-4.消費者契約法第10条に照らし特約が無効となった事例

大阪高判 平成17年1月28日

特約記載

「未納家賃・共益費、遅延損害金、原状回復に要する費用、その他賃借人が賃貸人に支払うべき金額があるときは、敷金よりこれらを控除した残額を返還する」

裁判所

賃貸借契約において賃貸人は、賃貸物を賃借人に使用収益させる義務を負い、その対価として、賃借人より賃料の支払いをうけるところ(民法第601条)、建物の賃貸借の場合、経年変化を含め自然損耗が起こることは明らかであり、賃貸人が負担すべきものである。

自然損耗分の原状回復費用までも賃借人に負担させる本件特約は、賃借人の義務を加重し、賃借人に不利益を与えるものであることから、本件特約は消費者契約法第10条により無効となる。

2.クロス張替の事例

 
クロス張替の争点となるのが、賃貸人が自然損耗部分を賃借人に負わせる部分が争点となる事が多い。

裁判所では自然損耗・経年劣化(変化)やクロスの負担範囲なども明確にしている。

クロスの賃貸人・賃借人負担部分の負担割合や負担の線引きなどは前回詳しく書いておりますので、興味のある方は是非ご参照ください。

→ 【敷金】原状回復ガイドラインのクロス張り替え費用の線引きとは

2-1.クロスの経年変化と自然損耗

仙台簡判 平成7年3月27日

契約書記載

「賃借人の責めに期すべき事由でこの物件を汚損したときは、賃借人は、直ちに原状に回復しなければならない」と記載

裁判所

壁の汚損は賃借人の責に帰すべき事由というよりも、むしろ、湿気、日照、痛風の有無、年月の経過によるものと認められ、壁の張替え費用は賃貸人の負担に属する。

2-2.部屋全体のクロス張替えを賃借人負担と認めた事例

春日井簡判 平成9年6月5日

概要

クロスの一部が賃借人の棄損により汚損、損傷。クロスの一部分の負担を賃借人が認めたが、部屋全体の修繕費用を賃貸人が請求

裁判所

賃借人の行為により棄損したものは全体の一部であるからといって、その部分のみを修復したのでは、部屋全体が木に竹を継いだような結果となり、結局部屋全体のクロスを張替え修繕せざるえないことになるが、それはとりもなおさず賃借人の責によるものといわざるを得ない。

3.経年劣化(変化)を考慮した事例

 
裁判所では経年劣化(変化)を考慮し精算するべきとしており、「建物・設備」の価値は時間と並行し減少していくとしております。

ガイドラインでも判例を基に経年劣化に関する事やクロスの負担割合、賃貸人負担部分などを明確にしております。下図はガイドラインの経年劣化(変化)に関する参考図です。

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経年劣化(変化)については裁判などに発展することが多い部分の為、こちらも詳細にわたり記事を書いておりますので宜しければご参照ください。

→ 【敷金】原状回復トラブル・経年劣化(変化)等について詳しく書いてみた

3-1.クロス・設備の残存価値が示された事例

東京簡判 平成14年7月9日

概要

入居の期間は2年間、賃借人の過失により壁ボードに穴をあけ修繕が必要。また台所換気扇の焼け焦げがあり交換が必要。

裁判所

壁ボード穴については賃借人の過失のため全額負担すべきであるが、壁ボード穴に起因する周辺の壁クロスの損傷については、少なくとも最小単位の張替えは必要であり、これも賃借人が負担すべきである。

なお、負担するべき範囲は約5㎡であり、本件壁クロスは入居直前に張替えられ、退去時には2年余り経過していることから残存価値は60%である。

台所換気扇の焼け焦げ等は、賃借人の不当な使用による劣化と認められる。なお、換気扇が設置後約12年経過していることから、その残存価値は新規交換価格の10%と評価されるため、換気扇取り替え費用25,000円の10%2,500円負担すべきである。

3-2.経年劣化は賃貸人負担とした事例

東大阪簡判 平成15年1月14日

契約書記載

「畳の表替え又は裏返し、障子又はふすまの張替え、壁の塗替え又は張替え等は賃借人負担とする」と記載

裁判所

クロスの負担すべき費用は子供による落書きをした11㎡部分のみであり、入居後57ヶ月経過しているため残存価値は28.75%のため、クロスの㎡単価1,050円に11㎡を乗じた後の28.75%である3,320円が賃借人の負担すべき費用である。

4.ハウスクリーニング特約の事例

 
ハウスクリーニング費用は特約事項に記載が無い場合は賃貸人負担となっております。

しかし特約に記載がある場合は、特約の要件などを満たせばハウスクリーニング特約は有効となっております。

4-1.ハウスクリーニング特約が有効とされた事例

東京地判 平成21年9月18日

概要

特約に「ハウスクリーニング費用25,000円(税別)は賃借人が負担、同様に鍵交換費用12,600円は賃借人負担」と記載、これに対して賃借人は契約は有効に成立してないとし、成立していたとしても消費者契約法第10条により無効と主張

裁判所

賃借人が負担する事となる、通常損耗の範囲が賃貸借契約書に具体的に明記されているか、口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、合意していることが必要としている。

本件において重要事項説明書、賃貸借契約書、東京都の賃貸住宅紛争防止条例に基づく契約書には明確に記載があり、消費者契約法第10条違反の当否も明確に合意していることをふまえ、金額、清掃範囲も相応な範囲のものであり一方的に賃借人の利益を害するとまではいえないとし特約は有効としている。

4-2.特約に記載のないクリーニング費用は賃貸人負担とした事例

仙台簡易裁判所  平成12年3月2日

概要

賃貸借契約書にはクリーニング費用を賃借人の負担とする記載も無く契約時に説明もない。使用状況は正常であり善管注意義務違反もない。

裁判所

通常使用による損耗、汚損を賃借人の負担とすることは賃借人に対し法律上、社会通念上当然発生する義務とは趣を異にする新たな義務を負担させることになり、これを負担させるためには特に賃借人が義務を認識し義務負担の意思表示をしたことが必要であり、賃借人の負担とすることは無効としている。

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